国家資格社会福祉士の活躍の場は、今や福祉分野にとどまりません。高齢、障害、児童、生活困窮といった領域はもちろん、教育・医療・司法・労働・企業など、あらゆる現場でその専門性が求められています。CSR(Corporate Social Responsibility)や商品開発など、企業活動の中でも福祉的視点が活かされています。
私たちの拠点である京都は、明治初期の東京への遷都により多くを失い、「喪失」を経験した地域です。しかしそこから、住民自らが立ち上がり、コミュニティ機能も備えた全国初の小学校の設立や、精神障害者への開放医療、訪問支援の実践など、先進的な取り組みを積み重ねてきました。認知症支援や日本初の聾唖学校の開校など、ヒューマンサービスの分野でも多くの挑戦が行われてきた歴史があります。
京都市内では、広い歩道や電動車いすの利用環境が整い、誰もが安心して暮らせるまちづくりが進んでいます。他地域からの移住者や高齢期を京都で過ごしたいという方々もおられます。一方で、学生の流動性や観光都市としての顔もあり、多様な人々が共に暮らす地域でもあります。府内に目を向けると、舞鶴の引き揚げ港としての歴史や、自然と共にあるライフスタイルの発信など、京都全体が「再生」と「継続性」を大切にしてきた土地であることがわかります。人口減少や少子高齢化が進む中、地域の暮らしをどう支えていくかが、今まさに問われています。
社会福祉士には、権利擁護の実践がますます求められています。意図せぬケースも含め、権利侵害を防ぐためにも、予防と早期対応の体制づくり、そして倫理観に基づく質の高い支援が不可欠です。住民の生活を支えるために、研鑽を重ね続ける姿勢が求められています。
京都社会福祉士会は、こうした京都の歴史と風土を背景に、実践と学びを深める場として活動しています。先人の精神を受け継ぎながら、新たな挑戦を重ね、地域に根ざした福祉の未来をともに築いていきましょう。
皆さまのご支援、ご協力を心よりお願い申し上げます。

2025年7月
一般社団法人京都社会福祉士会 会長 千葉 晃央